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日刊テラフォーニュース

『アンナ・カレーニナ』『レ・ミゼラブル』レビュー~19世紀に想いを馳せて~

2013年01月07日 19時00分 日刊テラフォー

(画像:『レ・ミゼラブル』『アンナ・カレーニナ』公式日本サイト
19世紀文学は魂という部品を描いた
文字を描く――この人類の娯楽であり芸術活動が最も盛んであり、そして最も力強かった時代と言えば、間違いなく19世紀という事になるだろう。例えば、ロシアからはドストエフスキー『罪と罰』、トルストイ『戦争と平和』。フランスではユゴー『レ・ミゼラブル』。イギリスではディケンズ『オリバー・ツイスト』……といった具合だ。
彼らが偉大である点は、「人間の行動」を分解し、「魂」という部品を言語で表現した点にあろう。例えば、『罪と罰』の小説は、次のような冒頭から始まりを告げている。
7月頭の、とても暑いある夕暮れ時、一人の青年が、寄宿している屋根裏部屋から降りてS路地裏に現れ、のろのろした、ためらいがちな足どりでK橋をさして歩き出した。

簡単に言えば、「若い男が家の外に出た」だけだ。しかしこの時点で、既に我々は物語の始まりを覚える。"のろのろ"、"ためらいがち"に歩く、しかも"屋根裏部屋"に住む青年に、何か悲痛な重さを感じずにはいられない。ここには文字によって表現された、偉大な人間の魂が見え隠れしている。
さて、筆者はここ最近、2本の文学原作の映画を鑑賞した。1本目はトルストイ原作、キーラ・ナイトレイ主演(代表作:『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ブーリン家の姉妹』など)の映画『アンナ・カレーニナ』。2本目はユゴー原作、ヒュー・ジャックマン主演(代表作:『X-MEN』『オーストラリア』など)の映画『レ・ミゼラブル』。どちらも良質の作品で、十分な見ごたえがあった。
『アンナ・カレーニナ』
(画像:wikipedia:イワン・クラムスコイ作の絵画『アンナ・カレーニナ』)
古くは『グレタ・ガルボ』『ヴィヴィアン・リー』などのハリウッド大女優が主演となり映画化がなされた。そして2012年、キーラ・ナイトレイがアンナ役に抜擢された。米国の大手映画情報サイト『IMDb』によると、同作品は7.1点(10点中:6180人が採点)という、なかなかの高評価を得ている。
『アンナ・カレーニナ』を読んだ者には、なんとなく、『アンナ』にロシア人らしい豊満で色気のある印象を覚える。そういった意味で、キーラは華奢で、どちらかと言うと男らしい、鮮やかなイメージだ。キャスティングの点に少し不満がある。ロシアの街を全体として描く"俯瞰"の映像がなかった点も、街や時代の雰囲気を掴みきれず、残念だった。
一方、演技や舞台描写はそれぞれに興味深い。所々にミュージカルの気風を交えた点も、冗長になりがちの文学作品に風穴を開けていた。尚、筆者は同作品を上海で鑑賞。日本国内の公開は来年3月29日が予定されている。
『レ・ミゼラブル』
(画像:wikipedia:出版当時の扉絵)
こちらも『ジャン=ポール・ベルモンド』『リーアム・ニーソン』などの大俳優が主演となり、かつて映画化がされている。2012年、『英国王のスピーチ』で一躍有名となったトム・フーバー監督の手によって、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウら豪華キャスティングを加えた、新しい『レ・ミゼラブル』が誕生した。『IMDb』では、8.2点(10点中:16219人が採点)と、こちらもかなりの高い評価だ。
ミュージカル版の映画化なので、エピソードに原作と異なる部分がある。全編がミュージカル構成となっており、それぞれの俳優の歌や演技力は圧巻。「大きな感動はなかったが、小さな感動が3時間続いた印象」という筆者の姉の意見が、的を射ているように思う。
逆に、特別に印象的な場面――例えば、『バルジャンが神父に救済される』『フォンティーヌが息を引き取る』『ジャベールが独白後に自殺する』――などの場面は、ミュージカルではなく、通常の演技のみを差し入れて欲しかったという印象もある。これらの部分は通常の映画描写の方が丁寧で、重みを増したようにも思える。
さて、もう年も明けた。映画でも観て、ゆっくり、愛する人たちと時間を共にし、新しい時間、新しい世界を迎えよう。
【記事:G・JOEⅡ】
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▼外部リンク映画『アンナ・カレーニナ』公式サイト
映画『レ・ミゼラブル』公式サイト