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スポットライトニュース

ドストエフスキーは燃えているか?(15巻)

2010年05月17日 15時00分 スポットライト

The Uncle’s Dream《伯父様の夢》
(前回のつづき)シベリア流刑の刑期満了後、1854年秋、33歳のドストエフスキーは、軍務の傍らで知り合った人妻マリヤ・ドミートリエヴナと恋をする。マリヤには9歳の息子パーヴェルがおり、家庭教師を務めた。1857年2月15日、36歳、マリヤと結婚。翌1858年、刑期によって定められた軍務の早期解除を請願しつつ、5月に執筆したのが『伯父様の夢』である。次回紹介するが、この作品と並行して執筆された作品として、『スチェパンチコヴォ村とその住人』がある。
物語の鍵となる人物は2人、マリヤ・アレクサンドロヴナという野心家の貴婦人と、富裕で身分も高い独身の「伯父様」、K公爵である。マリヤにはアファナーシィ・マトヴェーイチという気弱な夫と、美しい娘のジナイーダがいる。この娘ジナイーダには思いを寄せる青年がいるのだが、母マリヤは決してそれを許しはしない。なんとしても、娘をK公爵と結婚させ、自分の位を高めると共に、悠々自適な生活を送りたいのである。と、ここで肝心なのが、K公爵の精神状態。彼は体こそ健康であるが頭には少々怪しい所があり、思い切った変人と言おうか、いっそ少し気がおかしいぐらいの、善良な男なのである。マリヤの目論見が的中し、伯父様は自分の娘と言っても遜色の無い歳のジナイーダを見た途端にうっとりして、策略結婚の話が着実に進んでいく。数々のカタストロフが立て続けに起きた後、たたみかけるようにフィナーレ。
K公爵とマリヤのコミカルなやりとりが実に愉快なのがこの物語である。当初、ドストエフスキーは先述の『スチェパンチコヴォ村とその住人』と合わせ、これらの作品を純粋なる喜劇に仕立て上げたかった。シベリアの重苦しい記憶と、その後の混沌とした生活、てんかんの発作などとは裏腹に、その思惑は成功を収めている。尚、マリヤとその夫アファナーシィは、後に『白痴』の主要な登場人物に発展する。……――(次回へつづく)
▼外部リンク
フョードル・ドストエフスキー(Wikipedia、ロシア語)
a GreatClassics.com(英語)
Собрание сочинений (ロシア語、ドストエフスキー原文掲載)